グルタミン酸伝達物質ならびに、神経シナプス興奮時に多シナプス的に発現される癌遺伝子の1つである、Cーfos発現蛋白質を免疫組織化学的に染色することにより圧受容器反射脳内機構の検討を行った。まず対照実験として、無麻酔ラット腹腔内ホルマリン液適用による疼痛刺激1時間後の脊髄切片において、Cーfos発現蛋白質が脊髄後角内に多数発現していることを認めた。これは即に報告されている結果と一致し、本実験方法の妥当性を証明している。次にラットを麻酔下に左側大動脈神経を電気刺激(50Hz、0.1msec、10分間)したのち1時間後のラット延髄切片を染色し、Cーfos発現蛋白質が弱いながら同側の孤束核に、ごくうすク延髄腹外側部に発現していることを認めた。Cーfos発現蛋白質の過剰によって吸着した後の抗Cーfos発現蛋白質抗体を使用した場合には全ったく染色ニュ-ロンの存在を認めなかった。無処置ラット延髄切片におけるグルタミン酸染色を行い、孤束核ならびに延髄腹外側部にグルタミン酸含有ニュ-ロンが密に存在することを認めた。ついでCーfos発現蛋白質とグルタミン酸の二重染色を試みた。グルタミン酸の染色には、Cーfos発現蛋白質の発色(褐色)と区別するためにジアミノベンチジンのかわりに4ークロロ-ノ-ナフト-ル(青色に発色)を使用した。しかし、この二重染色は現在のところ成功するに至っていない。これは、グルタミン酸とCーfos発現蛋白質の固定条件が異なることならびに、グルタミン酸染色自体のむずかしさに起因しており、さらに検討中である。以上、孤束核ニュ-ロンならびに延髄腹外側部ニュ-ロンがたしかに圧受容器反射に関与していること、両部位にはグルタミン酸ニュ-ロンが密に分布していることを明らかにした。この結果は、先の生理学的実験結果にもとずく推論をニュ-ロンレベルにおいて実証したこととなる。
|