研究概要 |
吸収促進作用の結腸と空腸での部位差を検討するために,電位差法により,膜表面の拡散抵抗となる非攪拌水層の厚さを求めたが,結腸の方が大であり,結腸での吸収促進作用の方が大となる要因ではなかった。膜抵抗を比較すると,結腸の方が数倍大であり、形態学的に細胞間隙がTightである結腸の方が,促進剤に対して反応しやすいことが示唆された.他グループから空腸部ではD-グルコースが細胞間隙を開く促進剤的な作用を持つことが報告されている.本研究では膜の生存率維持のためにグルコースがメジウム中に含まれており,そのグルコースにより吸収促進剤(中鎖脂肪酸カプリン酸C10)の作用が抑制されている可能性が考えられる.このグルコースとC10の相互作用については,Caco-2細胞系において引き続き検討中である.パイエル板(PP)中のM細胞の特徴を活かした高分子ペプチドの吸収を検討するために,M細胞に親和性が高いと言われるレクチンの一種(FITC標識コンカナバリン,FITC-ConA)の透過性を求めたところ,昨年度検討したFITC-BSAよりも吸着性エンドサイトーシスによる未変化体のままでの透過量が大であった.そこで,ConAをConjugateしたFITC-BSAを合成し,透過をみたところ,BSAのPP透過性は有意に増大した.今後はConAを含め,M細胞親和性を持つ糖蛋白のPP透過性を検討する予定である.ヒト結腸癌由来の培養細胞Caco-2は形態学的に小腸の性質も持っており,グルコース存在,非存在下での透過性の比較に最適の実験系である.この系において,グルコース存在下でC10,EDTAのもつFITCデキストラン4000の細胞間隙透過性増大作用が有意に抑制された.この結果から,グルコースのNa共輸送系の関与,促進剤の作用機構にEDTAのようなキレート作用及びC10,グルコースのアクトミオシン収縮の活性化作用が関係していることが予想された.現在詳細な検討を次年度に向けて続行中である.
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