研究概要 |
吸収促進剤カプリン酸(C10)の結腸に対する作用機構として、細胞間接合部付近のカルモジュリン依存性のアクトミオシン(AM)収縮機構に注目した。In Vitroチャンバー法により、カルモジュリン阻害剤W7の存在下、高分子物質FITCデキストラン4000(FD4K)の透過に対するC10の増大作用及び膜抵抗の低下作用は有意に抑制された。従って、C10作用にカルモジュリン依存性のAM収縮が関係していることが明らかとなった。アシルカルニチン(アシル基炭素数10-16)の作用を検討したが、W7による抑制はなく、C10との作用機構の差が見出された。ヒト結腸癌由来のCaco-2細胞により、C10及びデカノイルカルニチン(アシル基炭素数10)のFD4K透過促進作用に対する影響因子を検討したところ、細胞外粘膜側のグルコースはC10作用のみを抑制することが示された。これはC10のキレート作用が、グルコースの細胞内取込みの際に共輸送されるNA^+により、細胞内Ca^<2+>が細胞外へ放出されたことにより抑制されたと考えられた。また、細胞内Ca^<2+>レベルは,C10により増大し、W7により、その増大は抑制されたことから、細胞内Ca^<2+>レベルの上昇は、前述したAM収縮に関与していると考えられる。パイエル板(PP)透過性を,In Situ閉鎖PP灌流法を用いて検討した。FITC-BSA及びFITC-コンカナバリンA(FITC-ConA)はPPを透過して、腸管静脈中へ出現し、In Vitroの膜透過性を反映する結果が得られた。また、マンノース存在下、FITC-ConAのPP透過性が特異的に阻害されるところから、PP中M細胞の膜表面上のマンノース認識結合部位が透過に関与していることが示唆された。PP指向性製剤として、FITC-BSAを封入したグリコール酸-乳酸の共重合体を用いたマイクロスフェアーを調製することに成功し、現在その投与実験を検討中である。以上、細胞間隙経路に対するC10の新しい作用機構が見出され、PP吸収と合わせ、高分子物質の吸収改善に有用な知見が得られた。
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