ウィルス感染症の診断は、感染に伴う抗体価の上昇を、とくにIgM分画の抗体価の上昇で検出するのが確定診断とされている。しかし、ウィルス感染の初期感染を検出するパラメ-タは、ほとんど知られていない。本研究の目的は、ウィルス感染初期に惹起されるリンパ球の反応に着目し、この反応をリンパ球内の可溶性アミノペプチダ-ゼ(CーAP)の変動の血清成分への反映で検出しようとするものである。 すでに我々は、リンパ球のPHA刺激による幼若化反応で細胞内の可溶性分画のアミノペプチダ-ゼが著しく上昇することを見いだし報告してきた(Blochem、J.1985)。さらに、この反応はT細胞に特異的であることを確証した。しかし、特異的な測定法が電気泳動分析を要するなど煩雑であるため、まず簡便な自動分析に電用可能な分析法を確立し、この方法を分析の基本とした。 この方法を用いて、ウィルス感染症初期での血清中でのCーAPならびに総アミノペプチダ-ゼ活性中のCーAPの占める比率の変動を追跡検索し、麻疹を中心に感染初期の酵素活性の上昇を証明した。その他の小児科を中心としたウィルス感染症、A型肝炎の初期、伝染性単核症など広範なウィルス感染症を対象に、特に感染の初期ににおけるCーAPの変動を中心として検索した。症例は大学病院に限らず、第一線の医療機関からも協力をも依頼し、ウィルス感染症初期でのこの酵素活性の変動を確認した。
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