ウィルス感染症の初期パラメータとして、血清中での可容性アミノペプチダーゼ(CーAP)の活性の変動を検索した。麻疹、風疹、伝染性紅斑、ロタウィルス感染による下痢症などの疾患では、このCーAPの患者血清での明かな上昇が観察され、同時に乳酸デヒドロゲナーゼ(LD)の活性上昇と、アイソエンザイム分画では、LD-2およびLD-3の上昇が観察された。一方、マイトーゲン刺激でTリンパ球でのCーAPの上昇が観察され、これらの血清酵素の変化は、ウィルス感染により活性化されたリンパ球に由来する酵素活性の変動と考えられた。この血清でのCーAPの変動は、ウィルス感染初期の情報として有用なものであることが示された。しかし、インフルエンザなどのようにCーAPの上昇の認められない疾患も存在し、今後の問題は残されている。すでに観察されているように、このCーAPの変動はリンパ球でもT細胞に特異的な反応であることから、感染の標的となるリンパ球の差による現象であれば興味ある所見となる。今後培養細胞でのin vitroの実験などで確認される必要のある現象である。 結論として、麻疹、風疹などの一部のウィルス感染症の初期パラメー夕としてCーAPが有用であることが示された。また、この初期の変動はA型肝炎の患者で、肝酵素の変動が認められる前にも観察され、ウィルス感染症に対して、リンパ球の反応を示す所見であると考えられた。
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