可溶型グアニル酸サイクラ-ゼは、分子量70K、82Kの二種のサブユニットから成る二量体酵素で、一分子のヘムを含んでおり、血管内皮細胞由来弛緩因子(EDRF、一酸化窒素、NO)で活性化される。これまで、NOによる本酵素の活性化は、NOがヘムに結合することで始まり、次いで両サブユニットのなんらかの共同作用が必要であること、放射線不活性化実験、およびサブユニットのクロ-ン遺伝子発現実験により間接的に示して来た。しかしながら触媒部位やヘム及びNO感受性部位が、どのサブユニットに存在し、どのように機能しているか未だ明かでない。本年度の研究は、精製酵素標品を用いるサブユニット再構成実験で、これらの点を明かにすることにある。 サブユニットの再構成実験には出発材料として、mg量の精製酵素標品を必要とするが、サイクラ-ゼのヘムとタンパク質との結合は弱く、酵素精製過程や精製標品の保存中にヘムが失われ、NOによる活性化が見られなくなる。そのため本年度は、サイクラ-ゼの精製法の改良を行い酵素標品が安定して供給できることを主眼とした。先ず精製材料であるラット肺の保存温度を今回購入した超低温槽で-80℃に下げることにより長期保存が可能になった。酵素はモノクロ-ン抗体カラムから3N尿素で溶出精製されるが、今回、溶出液中の尿素をシングルホロ-ファイバ-を用いて速やかに除去する器具の開発と改良を行い、回収率を数10%と飛躍的に改善することができた。また精製酵素のNOによる活性化能も数10倍とほぼ活性化能に関しては無傷の標品が得られるようになった。得られた精製標品溶液は淡緑黄色で、分光学的解析によりモル当り0.8分子のヘムを含むことが確認された。 この酵素標品を用いてサブユニットの再構成実験を行っている。8M尿素または6M塩酸グアニジンで酵素を完全変性したのち希釈法にて酵素活性の回復を計っており、そのためpH・温度・イオン強度等の条件について検討中である。またヘム以外に補欠分子族が存在する可能性もあり金属元素分析を急いでいる。
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