可溶型グアニル酸サイクラーゼは、分子量70K、82Kの二種のサブユニットから成る二量体酵素で、一分子のヘムを含み、血管内皮細胞由来弛緩因子(EDRF、NO)で活性化される。NOによる本酵素の活性化機序を調べるためサブユニットタンパク質の再構成実験を試みた。再構成実験には出発材料として、多量の精製酵素標品が必要であるが、シングルホローファイバー濃縮器を利用した抗体カラムの新しい溶出法を開発し酵素標品が安定して得られるようになった。標品は1モル当り0.8分子のヘムを含みNOにより活性化された。この標品を8M尿素または6M塩酸グアニジンで完全変性させたのち希釈液で100倍希釈し酵素活性の回復を計った。希釈液には20%グリセリン加20mMTris-HC1(pH=7.0)緩衝液に1mM DTT等を添加したものを使用した。しかしながら現在までのところ活性の回復が得られていない。問題点として本酵素の極端な不安定性が挙げられる。本酵素の高度精製標品は緩衝液のみによる100倍希釈でほぼ完全に失活する。そのため希釈には常に20%グリセリンの添加が必要であった。一般にこのような変性条件下での再構成実験は困難を伴うがサブユニットの機能を調べるためにはその分離と再構成は不可欠であり分後も継続して行う必要がある。 他方、サイクリックGMPの細胞内動態を血小板浮遊液を用いて調べた。ヒト血小板にもラット肺と同様な二量体グアニル酸サイクラーゼが存在し(イムノブロッティング法)、SNPで約200倍活性化されることが分った。浮遊血小板中のサイクリックGMPはSNP添加後約10秒を頂点とした持続約30秒の一過性上昇を示した。このときサイクリック(GMP分解系の阻害剤IBMXを添加しておくとサイクリックGMPの高値は維持されることから細胞内サイクリックGMP濃度は合成系のみならず分解系によっても調節されていることが分った。 さらにこの計画を通じて微量タンパク質の取扱い技術、特にマイクロシークエンス法の開発と改良を行い、いくつかのタンパク質の解析に応用できた。
|