血中のカテコラミンの約6割を占めるドーパミンは測定可能な遊離型が0.3%と微量(10-20pg/ml)であり、他は抱合型として存在することから臨床検査としてルチンに使用するのは難しかった。しかし、今回ジフェニルエチレンジアミン法を用いるHPLC法を開発して、ドーパミンを5pg/ml迄測定する系を確立した。健常者に於ける血中遊離型ドーパミン(以下ドーパミン)濃度は若年者で6.4±1.5pg/ml、高齢者で16.2±8.2pg/mlとなり、血中ノルアドレナリン濃度と同様に加齢の影響を認めた。臥位で低下し、座位及び立位で高値を示すことから、採血は臥位で行った。24時間に於ける血漿ドーパミン濃度は日内変動を示さなかったが、血漿ノルアドレナリン及びアドレナリン濃度は日内変動を示した。運動時の血漿ドーパミン濃度は等尺性運動では軽度の上昇を示したが、律動性運動では著明な高値を示した。その上昇は運動強度の増大と共に上昇し、好気性運動から嫌気性運動に移行する時点で急上昇した。血漿ドーパミン濃度と乳酸濃度とは有意の正相関を示したことから、ドーパミンは運動時の筋肉内循環に重要な役割を占める事が示唆された。各種疾病との関連では、本態性高血圧症患者で低値を示し、β遮断薬投与患者では更に低下した。原発性アルドステロン症や褐色細胞腫などの二次性高血圧症では血漿ドーパミン濃度が高値を示した。又心不全などの浮腫性疾患や甲状腺機能低下症でも上昇した。パーキンソン病や症候群でL-DOPA投与後の血中ドーパミン濃度は経時間内に上昇し、又、循環不全患者でドーパミン製薬投与中の症例では血中ドーパミン濃度が著増することから、薬物濃度のモニターとしても利用可能である。今後は各種疾患及び各種薬剤投与症例の血中ドーパミン濃度を測定して臨床検査的有用性を確認する予定である。
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