研究概要 |
臨床用及び分析用の核磁気共鳴(NMR)装置を用いて、脳腫瘍及び肺癌を対象として、in vivo及びin vitroのNMRスペクトルデータを蓄積すると共に、多変量解析により、データを解析し、診断の的中率を求める手法を確立した。脳組織においては、正常組織と腫瘍組織(low grade astrocytoma,glioblastoma,ependymoma,meningioma,neurinoma,pituitary adenoma,metastatic tumor)との識別は、93%の的中率で可能であった。また、臨床上で鑑別診断が問題となる場合を想定して識別力を見た。悪性度が問題となるglioma系脳腫瘍のlow grade astrocytoma、glio'blastoma、ependymomaの鑑別は、80%の的中率で可能であった。また、小脳橋角部に発生したときに、鑑別が問題となる事のあるmeningiomaとneurinomaでは、100%の的中率が得られた。7種類の脳腫瘍全てを対象とした組織診断は、的中率が65%であり、現在のパラメーターを用いるだけでは、脳腫瘍全てを対象とした識別は難しかった。肺組織においては、正常組織と癌組織(扁平上皮癌、腺癌、小細胞癌、大細胞癌)との識別では、的中率91%であり、4種の癌組織の識別では、的中率82%であった。特に、症例数の多い扁平上皮癌と腺癌の識別では、的中率95%であった。以上の如く、本研究により、NMRスペクトロスコピーを用いた腫瘍組織の組織診断が、十分可能である事を示した。また。組織診断を行うための手法も開発することができた。
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