本大学病院に勤務する看護婦と女性事務職員869名に対して蓄積疲労、睡眠障害、月経異常などの実態を知る目的で172項目のアンケート調査を平成3年7月中旬に実施し、813名から回収した(回収率93.6%)。1.蓄積疲労では、看護婦で精神性愁訴が、事務職では身体性愁訴が多く、業務内容の違いが顕著に認められた。2.睡眠障害では、顕著な睡眠異常を認めなかったが、日常睡眠に対して看護婦の60〜70%が不満足と回答し、事務職より多かった。交代制勤務(シフトワーク)経験の浅い看護婦程、睡眠の不十分さを訴えているが、経験者でも睡眠の満足感を得ようと眠るための工夫をする(飲酒、睡眠剤など)率が高かった。3.月経障害では、日常生活に支障を来す程の月経症状を訴える看護婦が約45%あり、事務職のそれより多かった。主症状は両群とも下腹痛・腰痛、眠気であり、看護婦では経験年数と共に7年目まで漸増し、その後漸減する傾向を認めた。月経時の眠気は約60%に認められ、月経直前から約4日間持続し、35歳をピークに以後年齢と共に持続日数が短縮した。4.アンケート結果からシフトワーカーを異常群、正常群に分け、看護婦18名、事務職6名(対照群)(年齢21〜40歳)について2夜毎の睡眠脳波記録を実施した。看護婦の夜間睡眠は、対照群と比較しても、睡眠効率は良く、睡眠障害を認めなかった。しかしながら勤務経験の長い看護婦(正常群が多い)程、徐波睡眠の出現が減少し、勤務経験5年未満の看護婦(異常群が多い)では、生体リズムの不整を思わせる脳波の出現がしばしば認められた。5.体温や睡眠・覚醒リズムの具体的調査は遂行出来ず、今後の課題として残された。6.これまでの予備的研究から、看護婦のシフトワークへの生理的順応に3〜4年間が必要と考えてきたが、本研究から、蓄積疲労、睡眠障害、月経異常、脳波異常、睡眠構築など、シフトワーク経験7年位に境界のある可能性が示唆された。
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