A特例許可老人病院に入院中の患者(721名)の家族を対象とした家族調査(調査A)、並びに看護婦を対象とした患者の入院に伴う変化過程の調査(調査B)、および退院患者に対する訪問調査を実施した。 その結果、調査Aからは入院前の患者および家族の状態が明かになり、ADLについては全面的または大部分介助を要するものが、入浴、衣服の着脱、排泄などで半数を越し、介護量の多い対象であり、痴呆は52%が有し、家族の介護負担感は痴呆により有意に上昇していた。家族が介護の援助者を得られたのは1/4以下で、家族内援助がその80%を占め、ヘルパ-を始めとする社会資源の活用は非常に低率であったが、その中で、市町村等の介護講習を受けた群で利用度の増加が認められた。今後の患者の生活場所に対する家族の意識は、自宅は37%に留まり、他は入院継続23%、施設入所21%など家族の希望と現状の離開も認められた。 B調査によると、医療側からみた入院目標達成者は37%であり、26%は目標達成後1年以上経過していた。入院後の患者のADLの変化をみると、移動、食事については余り変化がないが、入浴、排泄については自力で可能なものが減少し、全面介助を要するものが増加している。さらに入院期間別に分類すると、在院2年を越すと自力で可能なものが減少する。また、家族の介護意欲は、あり12%、少しあり34%、なし31%と判断しており、患者の多くが病状が安定しても家族の介護意欲の増加はみられず、退院後在宅を考えている家族は、入院後2年以内群に有意に高いという結果であった。このように、入院2年後を契機として家族関係が変化していく様相が示された。 なお、訪問対象は7件と例数が乏しく数量的分析には至らなかったが、老人自身および家族の在宅希望の強さ、家族のいづれかとの関係の深さ、準備教育および地域の社会資源の紹介が在宅への移行に効果的であった。
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