研究概要 |
1.K医大附属病院に勤務する162名のナースを対象に調査したPines Burnout Measure(PBM)およびMaslach Burnout Inventory(MBI)による質問の回答を因子分析した.PBMでは抑うつ感,満足感,疲弊感の3因子が抽出された.MBIでは,Maslachらと同様にEE,PA,DPの3因子が抽出されたが,3項目の質問でそれが属す因子に違いがみられた.PBMとMBIの因子分析で得られた尺度得点間の相関の検討から,両者にはその測定内容に微妙な違いのあることが示唆された.MBIではBurnoutの進行によって,EEの上昇がはじめに起こり,次いでDPが上昇するといえるようであったが,PAの動きには複雑な要因の関与が想像された.2.上記のナースを対象に測定したPBMおよびMBIによるBurnout得点と,東大式エゴグラム(TEG)・チェックリストによる5つの自我:CP,NP,A,FC,ACの得点との関係を検討した結果,CP,FC,ACが高い者で,NP,Aが低い者でBurnout得点が高いことがわかった.また,Peakに位置する自我がACの者で,Bottomに位置する自我がNPの者で,Total energyのレベルが高い者でBurnout得点が高かった.上記の自我構造の特徴に基づいてBurnontに陥りやすい者の予測を試み,そのための一つの手だてを得た.3.看護科学生の臨床実習中のPBMおよびMBIによるBurnout得点は,実習前より上昇し,実習の終了時には実習前の値に戻った.一方,実習中の心電図R-R間隔のばらつき(R-R:CV)は実習前に比ベて有意に縮小していたが,実習の終了時には実習前の値に戻っており,Burnout得点の変化とR-R:CVの変化とに同調が認められた.さらに,実習中のR-R:CVの縮小が大きかった者ではBurnout得点の上昇が大きかった.また,強いストレスが推測される深夜勤後のナースや手術後ICUに入室中の患者のR-R:CVには明らかな縮小が認められた.得られた結果から,R-R:CVの縮小はストレスの指標となりうると思われた.
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