【序論】アポ蛋白Eは酵素活性調節作用、および受容体結合能を有し、コレステロールに富むリポ蛋白の代謝に重要な役割をはたしている。高コレステロール食負荷時に見られるアポ蛋白Eの合成分泌の亢進は負荷に対してその異化を促進するための合目的的な反応と考えられる。本研究はではモルモットのコレステロール負荷時に見られるアポ蛋白E合成亢進の機序を遺伝子DNAレベルで解析することを目的として検討を行った。【方法】モルモットを通常飼料、または高コレステロール食で4週間飼育した。肝細胞の初代培養を行い、アポ蛋白E遺伝子DNAの制御領域を導入し、転写活性を測定した。モルモットの肝臓より核蛋白試料を調製し、アポ蛋白E遺伝子DNAの5'上流制御領域との結合を解析した。【結果】初代培養肝細胞系を用いたCATアッセイにおいて、アポ蛋白E遺伝子DNAの5'上流に転写活性が認められ、この転写活性はコレステロール負荷により増強した。ゲルシフト法において、アポ蛋白E遺伝子DNA-肝核蛋白結合に、コレステロール負荷による変化がみられた。フットプリント法において、核蛋白によるアポ蛋白EDNAの保護が見られた。サウスウェスタン法において、110kDa、33kDaに特異的結合が観察され、33kDaの結合はコレステロール負荷肝核蛋白では著減していた。【結論】本研究によりアポ蛋白E合成はコレステロール負荷により遺伝子転写レベルで調節されている事が明らかになった。肝核蛋白中にはアポ蛋白EDNA転写活性を調節する因子が存在し、33kDaの結合蛋白が転写抑制性の調節因子である可能性が示唆された。ステロール負荷により転写亢進を起こす機構はこれまで報告が無く、本研究の成果は高脂血症の治療、予防にも貢献しうるものと期待される。
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