研究概要 |
本研究では動脈硬化発症に対して予防的と考えられるコレステロール逆転送系の調節機構を解明するため、コレステロール逆転送系におけるアポ蛋白EとCETPの意義並びにアポEとCETPの相互作用について検討することを立案し、本年度は特にアポEのCETP活性に対する影響について検討した。 アポEを含まないVLDLはアポE欠損症患者の血清より超遠心法を用いて調整した。このVLDLをアポEと孵置しアポE含有VLDL(E-VLDL)を作製した。脂質の転送活性を見るため ^3H標識中性脂肪(TG)もしくは ^<14>C標識コレステロールエステル(CE)を含む人工リポゾームを用いてリポ蛋白との間でコレステロールエステル、トリグリセリドの転送を検討した。リポゾームとE-VLDL,C-VLDLをCETP存在下,非存在下で孵置し、TGとCEの転送を検討した。CETP非存在下では、E-VLDL,C-VLDLともに脂質の転送はほとんど認められなかったがCETP存在下では、E-VLDLはC-VLDLと比較して有意により多くのTG及びCEの転送が観察された。以上のことよりVLDL上にアポEが存在することにより、CETPを介した脂質転送が活発になっていることが示唆された。CETPの活性化にはリポ蛋白との結合が重要であることが知られているので、CETPとVLDLとの結合を検討した。E-VLDLとC-VLDLをCETPと4℃にて30分間孵置したのちカラムにて分離したところ、E-VLDLのほうがCETPへの結合性が高いことが確認された。以上より、アポEは血清のCETP活性を介した脂質の転送を促進することが確認された。通常、アポEは細胞からの脂質転送を介したコレステロール逆転送系の初期作用において重要な作用を有すると考えられていたが本研究によりコレステロール逆転送系の要と考えられるCETPの活性をアポEが調節してると考えられ、アポEの動脈硬化予防における意義が強調される。
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