研究概要 |
1.ビタミンD_3は血管平滑筋細胞に働いて、プロスタサイクリン産生を促進する事実を確立した。その機序として活性型ビタミンD_3はプロスタサイクリン(PGI_2)産生系に関与する酵素であるサイクロオキシジネースのメッセンジャーRNAの発現を促進するとこを明らかにした。すなわち、活性型ビタミンD_3は骨代謝に関与するばかりでなく、抗動脈硬化作用を有していると考えられる(Prostaglandins 42:127-136,1991)。 2.さらにこのビタミンD_3の作用機序を解明するために、活性型ビタミンD_3の誘導体である22-OXA-1,25(OH)_2D_3を用いて、この作用は活性型ビタミンD_3のCa上昇作用によるものでないことが判明した。すなわち、細胞またはin vivo投与でCa上昇作用のごく弱い22-OXA-1,25(OH)_2D_3にも血管によるプロスタサイクリン産生を促進させる作用があることを明らかにし得た(Life Sci.,51:1105-1112,1992)。 3.糖尿病性合併症の成因として注目されているソルビトール経路のアルドース・リダクターゼを阻害する有効成分を我々は漢方薬から見出した。このアルドース・リダクターゼ阻害剤はisoliquiritigeninで、この力価はONO-2235に相当し、さらには強力な血小板凝集抑制作用を有することを見出した(Eur.Pharmacol.,212:87-92,1992)。 4.またこのアルドース・リダクターゼのメッセンジャーRNAが血管内皮細胞において、生理的な高濃度のグルコースにより発現されることを初めて明らかにした(Diabetologia,35:730-734,1992)。 5.このソルビトール経路と関連し、糖尿病性神経障害にサイクリックAMPが重要な役割を果たしていることを発見した(J.Clin.Endocrinol.Metab.,74:393-398,1992)。
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