研究概要 |
1)ラット肝細胞の甲状腺ホルモン応答性t蛋白(ペルオキシゾームのbifunctional enzyme)が、ラットの甲状腺摘除後に蛋白量とmRNA量が増加し(Biochem Biophys Res Commun 185:211,1992)、少量のT3(0.3-1.0μg/100g体重)投与後に迅速に(24時間以内)減少する事を平成4年に報告した。平成5年はCAT assayによりgenomic DNAの5'上流域(-1600bp)にnegativeなT3 responsive elementの存在を示し、甲状腺ホルモンによるt蛋白のnegative regulationは転写活性の調節による事を確認した(manuscript in preparation)。 2)甲状腺ホルモン応答性のラット肝細胞核蛋白(n蛋白)のcDNAを用いた実験で、T3によるn蛋白の増加はmRNAの増加によるものである事を示した。このcDNAが真にn蛋白のcDNAであることを証明する為の作業を進めているが、依然n蛋白のcDNAの全長が得られておらず、部分的に解析されたアミノ酸配列との比較も出来ていない。 3)前年度の研究において残された課題である、T3の核への移行について、核に移行するT3はcarrierを介してエネルギー依存性に取り込まれたT3であり、さらに核外から核内へのT3の取り込みについても独自の調節機構が存在することを解明した(Endocrinology 130:2317,1992)。さらにこの研究の延長として、T3とT4においては細胞内の輸送機構は異なる事を示した。T4と違いT3の細胞外から核内への移行は細胞周期の各時期で異なり、s期において取り込みが最も多く、またこの時期に核受容体数も増加していた。 さらに培養ラット肝癌細胞(dRLh-84)において、T3は細胞増殖作用を示したが、この作用はs期を短縮する事によるものであった。すなわちs期には細胞へのT3取り込みと核受容体数の増加とともにT3作用が増大する事を見いだした(manuscript in preparation)。
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