研究概要 |
高糖濃度条件下で培養した腎糸球体メサンギウム細胞に種々の代謝機能異常が生じ,糖尿病性腎症の発生に重要な役割を演じていることが示唆されている。一般的に,細胞外に存在する過剰なグルコースは,まず糖輸送担体(グルコーストランスポーター)を介して細胞内に取り込まれ,種々の代謝過程で変異を引き起こすものと思われるが,メサンギウム細胞における糖輸送担体の性格についてはほとんど知られていない。 本研究では,(1)メサンギウム細胞に存在する糖輸送担体の種類について,1型及び4型糖輸送担体に対する特異抗体を用いるimmunoblot法により検討し,1型のみが存在するとの成績を得た。他方,筋肉・脂肪型とされる4型糖輸送担体は検出されなかった。(2)1から5型までの糖輸送体に対するcDNAを用いて各輸送体の遺対子発現状態を検討したところ,1型糖輸送体に対するmRNAのみが検出され,上延のimmunoblot法の成績と一致していた。 更に(3)糖輸送(2-deoxy-glucose取り込み)を増加させるIGF-1(100ng/m1)添加後の1型糖輸送担体の変化について検討したが,IGF-1添加前の量に比し,1時間ではmRNAに有意の増加は認められなかったが,3時間では有意の増加が認められた。また,同様の現象は牛胎児血清添加によっても生じていた。 以上の成績から,メサンギウム細胞には,生体内各組織に普遍的に分布している1型糖輸送体のみが存在すること,IGF-1による糖輸送の亢進は輸送担体mRNA発現の増加を介しているこが示唆された。今後,IGF-1による糖輸送担体の活性に対する影響及び糖が過剰に存在する条件下で,IGF-1が糖輸送担体(1型)の増量ないしは活性化に及ぼす影響につき検討を加えていく必要があろう。
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