当初の計画と異なり、アメリカのグル-プからラット肝5ーdeiodinase(以下5'ーD)のcDNA seguenceが発表されたので、文献に基づいて、cDNAを作成、Notherのblotによる発現調節状構の検討をはじめた。また予想アミノ酸配列から合成ペプチドを作成し、抗体を作成中である.これにより酵素を確性、量、mRNAの各レベルで検討し得るようになった. 一方、脳の複雑、不均一さは研究の大きな妨げであるので、より単純な系を模索したところ、下垂体後葉に甲状腺ホルモン代謝活性を発見した。5'ーDの他に、甲状腺ホルモンを不活性化する5ーdeiodinaseも存在しそのアイソザイムは脳におけるものと同一と考えられた。現在下垂体後葉を単離、培養し、5'ーD、5ーDの相互関係、pituicyte、神経終末の関係、バゾプレシン分泌への影響など検討中である. 松果体にも5'ーDの他、5ーDの存在することを発見した。これも脳におけるアイソザイムと同一と思われ、現在日内リズム、カテコラミンの影響等検討中である. 従来甲状腺との関係でほとんど注目されていなかった舌下腺に5'ーDの存在することを発見した。脳には直接結びつかないが、頸部交感神経節からの調節が予想され、腺活動、ホルモン、神経の相互作用を調べる好いモデルとして検討している. 他に、方法論の事であるが、5ーdeiodinaseに良い測定法がなく、大変煩雑であった.[3.5ー ^<125>I]T_4という特殊な位置にラベルした基質を用いることにより簡便な測定を開発し、また5'ーDについてはtypeーI、typeーIIというアイソザイムが存在するが、区別にあいまいさがあった.両者で2ーthiouracil誘導体に対する阻害に差のあることを見出し、アイソザイム判定に利用できることを示した。以上の如く、一年目は基礎検討に時間を要したが、次年度は5'ーD調節機構を明らかにするべく実験中である.
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