グルココルチコイド受容体異常によるグルココルチコイド抵抗症家系の受容体遺伝子解析を行った。一家系二症例のEpstein-Barr(EB)ウイルスで形質転換したリンパ球でのグルココルチコイド受容体測定にても末梢血単核球で認められたのと同様、受容体数が正常の半分に減少している。形質転換したリンパ球より総RNAを抽出し、逆転写してcDNAを作成後PCRを行った。あるいはリンパ球よりDNAを抽出し、ゲノムDNAをテンプレートにしてPCRを行った。cDNAあるいはゲノムDNAよりPCRを行い直接法にてPCR産物より受容体遺伝子の塩基配列を決定した。その結果、本二症例ではグルココルチコイド受容体cDNA2440から6個つづくアデニンの中3個のアデニンが欠損していることが明らかとなった。この欠損はcDNAおよびゲノムDNAをテンプレートにしたPCR産物のどちらからも認められ、これによって、グルココルチコイド結合領域を含む受容体蛋白のアミノ酸、リジンが1個欠失することとなる。リジンの欠失した受容体蛋白の立体構造は、おそらく大きく変化し、グルココルチコイドが結合できなくなるのではないかと考えられる。これを確認するには異常グルココルチコイド受容体遺伝子の発現を行う必要がある。この遺伝子異常は二症例ともヘテロ接合性であり、これらの症例のグルココルチコイド受容体の結合親和性が正常人の半分になることが説明できる。また、ノザン・ブロット解析で二症例でのグルココルチコイド受容体mRNA量が正常とかわらないこともこの遺伝子異常の結果とは矛盾しない。 現時点にて異常グルココルチコイド受容体遺伝子発現をのこして、私どもが経過を観察したグルココルチコイド抵抗症家系の受容体遺伝子異常を明らかにすることができた。
|