研究概要 |
ビタミンD受容体は核に存在するステロイド受容体の一種であるが1,25ーdihydroxyvitamin D(1,25D)が結合することにより活性型に変化する。それにより、活性化遺伝子が豊富に存在すると考えられるnuclear matrix部に移動し、遺伝子DNAと結合してその発現を促進すると考えられる。今回、この過程におけるビタミンD受容体燐酸化の意義を明らかにする目的で実験を計画した。昨年、Cーkinase、Aーkinaseがin vitroでビタミンD受容体を燐酸化することが明らかにされ、Cーkinase、Aーkinaseの活性化剤である12ーOーtetradecanoylphorbolー13ーacetate(TPA)及びdibutyryl cyclic AMP(DbcAMP)を用いて、これらが1,25Dのヒト白血病細胞に及ぼす効果に対しどのように影響を及ぼすかにつき検討した。DbcAMPは1,25Dによる細胞分化誘導作用及び1,25Dー24水酸化酵素活性誘導作用を有意に増強した。TPA自身も1,25Dと同じくHLー60細胞の単球系への分化誘導作用を持つことより1,25Dの分化誘導を増強するか否かは判定不能であったが、1、25Dによる24水酸化酵素活性を有意に増強した。dbcAMPとTPAの増強作用は相加的であった。次にHLー60細胞に対する1,25Dの作用強度を細胞内cAMPが生理的に調節しているか否かを明らかにする目的で以下の実験を行った。我々はHLー60細胞を腎不全患者血清で培養した場合1、25Dの分化誘導作用、24水酸化酵素活性誘導作用が低下していることを見い出した。これが細胞内cAMP濃度低下により1、25D作用が低下しているのか否かを検討する目的で細胞内cAMP濃度を測定した。この結果、腎不全血清で培養した場合、正常人血清で培養した場合に比べて細胞内cAMP濃度が有意に低下している事を見出だした。また、細胞内cAMP濃度と1,25Dによる細胞分化誘導との間には有意な正の相関が認められ、細胞内cAMPが生理的に1,25DのHLー60細胞に及ぼす作用強度を調節しているものと考えられた。
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