1.チロシンホスファターゼ(Leukocyte common antigen-related phosphatase:LRP)cDNAのクローニング PCR法にて得られた部分cDNAの塩基配列をもとにヒト腎cDNAライブラリーよりPCR法を利用し、ヒトLRPの全蛋白翻訳領域を含むクローンを得て、その塩基配列を決定した。ヒトLRPは793のアミノ酸よりなり、また、膜貫通部を有し、2つのチロシンホスファターゼ触媒ドメインを有する受容体型チロシンホスファターゼであった。 2.ヒトRPゲノム遺伝子のクローニングおよびその構造解析 1.にてクローニングしたヒトLRP cDNAをプローブとして、ヒトLRPゲノム遺伝子のスクリーニングを続行し、得られた陽性クローンの解析を行った。しかしながら、未だにヒトLRP遺伝子の5'端をカバーするクローンを得られず、さらに解析中である。 3.糖尿病状態におけるチロシンホスファターゼ遺伝子発現 ラットLRP部分cDNAをRT-PCR法によりクローニングをおこない、これをプローブとして用い、ノザン法にて、遺伝子発現を検討した。正常コントロールラット各組織(脳、肺、肝、腎、脾、胃、小腸、大腸、骨格筋、心筋、膵)において、LRP遺伝子発現が認められた。特に、脳でその発現レベルが高かった。次に糖尿病状態(ストレプトゾトシン投与、デキサメサゾン投与)および摂食状態(自由摂食、絶食3日間、絶食後再摂食)における脳、肝、腎、骨格筋において、LRP発現レベルの明かな変化は認められなかった。以上より現在のところLRPの糖尿病との関連は否定的であると考えられた。今後LRP遺伝子発現を細胞レベルで検討するため、In situ hybridi-zation法の応用を検討中である。
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