研究概要 |
Insulin‐like growth factor(IGF)は血中および組織中ではIGFに特異的に結合する蛋白(IGFBP)と結合して存在する。昨年は種々の病態の血中IGFBPをWestern ligand blot法を用いて検討をしたが,本年は更にIGFBP‐3をWesternimmunoblot法にて、IGFBP‐1をRIA法にて測定した。 健常人では41,38,30kDのIGFBP‐3のバンドが認められ,IGFBP‐3の内,65〜85%は41/38KDであり,15〜35%は30kDであった。Western ligand blotの成績から,41,38kDはIGFと結合する蛋白であり,30kDは結合しないdegradatinされたフラグメントと考えられいる。末端肥大症では41/38,30kD IGFBP‐3とも増加し,GH分泌不全症では両型とも減少し、その割合に差はなかった。妊婦血清でligand blotではIGFBP‐3は認れられないが、WIBでは比較的大量の30kD型が認められた。肝硬変症,低栄養では両型ともIGFBP‐3は減少した。低血糖を呈するIGF‐II産生膵外腫瘍では30kD型が殆どを占める症例が認められた。又,健常人およびGH分泌不全症にIGF‐Iを7日間連日投与したが,ラットで認められた様な明かなIGFBP‐3の変化は認められなかった。健常成人5名にIGF‐Iを0.06,0.12mg/kgを朝空腹時に単回皮下投与し、経時的に血中IGFBP‐1を測定した。血中IGFBP‐1はIGF‐I投与1時間で増加し,投与5時間で頂値を示した(0.06mg/kg:103±33ng/ml(前),602±90ng/ml(5時間);0.12mg/kg:91±38ng/ml(前),740±143ng/ml(5時間)。このIGFBP‐1の増加の程度はIGF‐Iの投与量とは比例せず,また,血糖の低下の程度,インスリン分泌の低下の程度とも相関しなかった。以上,種々の病態におけるWestern immunoblot法による血中IGFBP‐3,RIA法によるIGFBP‐1について報告した。Western immunoblot法によるIGFBP‐3の測定は特異的でサイズも同時に検討できる点で有用であると考えられた。
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