研究概要 |
本年度は、ラット下垂体腫瘍由来細胞GH_4C_1細胞を用いて,ホルモンで刺激したとき,そのホルモン受容体に連関するG蛋白の動態を検討した。GH_4C_1細胞ソマトスタチン(10^<ー6>Mでインキュベ-トした後,膜画分と100000×gの上清画分にわけて,Gi_2のαサブユニットのC末のペプチドに特異的な抗体でイムノブロット法を行い,αサブユニットの動態をみた。通常,上清画分にはG蛋白のαサブユニットは存在しないが,ソマトスタチンで8分インキュベ-トすると,上清画分にGi_2のαサブユニットが観察され,他方,膜画分からGi_2のαサブユニットの減少が観察された。この遊離したαサブユニットはβγサブユニットの共存下で百日咳毒素でADPーリボシル化された。次に,細胞膜からのαサブユニットの遊離機構を検討した。Gi/GoのαサブユニットはN末の2位のグリシンに結合したミリスチン酸を介して細胞膜と結合することが知られている。[ ^3H]ミリスチン酸で標識したGH_4C_1細胞の細胞膜をソマトスタチンでインキュベ-トし,その後に細胞膜と上清画分にわけ,上清画分をGi_2のαサブユニットの抗体で免疫沈降させた後に電気泳動で調べるとαサブユニットと同じ分子量のバンドのところに[ ^3H]標識バンドが観察され,αのサブユニットはミリスチン酸を保持したまま遊離したことが示唆された。 以上の結果,ラット下垂体由来GH_4C_1細胞をソマトスタチンで刺激することにより,ソマトスタチン受容体に連関するGi_2のαサブユニットがトランスロケ-ションをおこし細胞膜から遊離することを見出した。このαサブユニットはC末とN末の分解しない状態で,細胞質に存在し,βγサブユニットと再結合が可能なことを明らかにした。
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