研究概要 |
ラット下垂体由来GH細胞を用いて、可溶性G蛋白質の性状を解析した。本細胞で抑制性G蛋白質と連関するホルモンとして代表的なソマトスタチンが存在する。このホルモンと細胞膜をインキュベートするとやはり膜からαサブユニットが遊離し、ホルモンの濃度に依存して作用が発現した。このソマトスタチンの効果は予め細胞を百日咳毒素で前処理することにより阻害された。ソマトスタチンによって遊離したαサブユニットはGi_2とGoのαサブユニットで、Gi_3のαサブユニットは遊離しなかった。このことは本細胞でソマトスタチンの受容体はGi_2やGoと連関し、Gi_3と連関しないことを意味する。一方、intactの本細胞をソマトスタチン(10^<-6>M)でインキュベートした後、膜画分と100,000×gの上清画分にわけて、イム/ブロット法でαサブユニットの動態を検討した。通常上清画分にはG蛋白質のαサブユニットは存在しないが、ソマトスタチンで8分インキュベートすると、上清画分にGi_2のαサブユニットが観察され、一方、膜画分からGi_2のαサブユニットが18%減少した。時間的経過をみると、8分から32分まで持続的に細胞質画分にαサブユニットの上昇が確認され、60分後では減少傾向がみられた。一方これに対応した膜画分中のαサブユニットの変動を確認した。ところでソマトスタチンは生体内で広範に負の調節因子として作動する一方、種々の刺激促進因子の作用をup regulationすることが明らかにされている。この遊離した可溶性G蛋白質とソマトスタチンのup regulation作用の関係を現在解析中である。一方、本細胞でGsと連関するホルモンであるVIPにおいても細胞膜から細胞質にGsのαサブユニットを遊離することを見い出した。その動的変動機構はソマトスタチンの場合と類以の機構であることが示唆された。
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