骨髄不全を呈する疾患、特に骨髄異形成症候群(myelodysplastic syndrome;MDS)における血液幹細胞と芽球の細胞病態学的異常を明らかにするために、患者骨髄からCD34^+細胞を純化し、無血清培地を用いて以下の点を解明した。 1)芽球の純化率は形態学的にほぼ100%、表面形質による検討では87〜98%がCD34^+であり、MDSにおいてもCD34モノクローナル抗体を用いた幹細胞・芽球の純化が可能であった。 2)純化MDS・CD34^+細胞の回収絶対量は、77%の症例で増加していた。 3)MDS・CD34^+細胞のコロニー形成率は、不応性貧血(refractory anemia;RA)など臨床的に軽症の症例で正常コントロールの約50%、芽球増加型(RAEB)などの重症例で約25%と低下ししていた。 4)形成されるコロニーの細胞系列の検討から、MDSにおいては、臨床的重症度が高くなるに従って赤芽球系幹細胞が減少し、顆粒球系幹細胞が増加した。 5)約40%のMDS症例で、G-CSFに対する純化芽球の反応性低下が認められた。 6)以上のMDSにおいて認められた幹細胞・芽球の細胞生物学的異常は、骨髄の微少環境の異常に起因するのではなく、MDS芽球そのものの異常に基づくものであった。
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