血管内皮細胞から血小板放出を促進する因子が放出される機構を想定し、以下の研究計画を立案した。 1)ヒト血管内皮細胞は接触あるいは非接触状態でヒト巨核球系細胞株(CMKー7)を成熟させるか。 2)ヒト血管内皮細胞は骨髄から分離した巨核球をさらに成熟させるか。 3)ヒト血管内皮細胞を各種因子(特に血小板減少血清)で刺激した上清に血小板放出促進因子が含まれるか。 本年度は1)と2)について研究計画に従い実験を行った。1)については巨核球系細胞株(CMKー7)を血管内皮細胞上で培養すると細胞サイズの増大、ATP量とセロトニン量の増加、走査電顕による観察ではCMKー7は細長い細胞突起を形成し、突起にはproplateletに類似した小結節が形成された。この所見は正常巨核球の細胞突起形成過程に類似した所見であった。これらのCMKー7の成熟促進作用は血管内皮細胞と直接接触させて培養した時のみで観察された。以上の結果から血管内皮細胞には巨核球系細胞株(CMKー7)の成熟促進作用が存在すると結論した。次にヒト骨髄から分離精製した巨核球を血管内皮細胞上で培養し、巨核球に生ずる形態変化について検討した。巨核球の分離精製は当初の計画とは異なり、巨核球分離装置(セルペップ)によりおこなった。ヒト巨核球でもCMKー7で見られたと同様な細胞突起形成が観察された。この所見は血管内皮細胞にはヒト巨核球の成熟促進作用も有することが証明された。正常巨核球の場合はCMKー7の場合とは異なり直接接触させる必要はなく、血管内皮からなんらかの因子が放出されている可能性が示唆された。来年度は血管内皮細胞から放出される巨核球成熟促進因子の精製を試みる予定である。
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