研究概要 |
佐藤らの樹立した巨核芽球性白血病細胞株(CMK)において、種々の分化誘導剤及び増殖因子処理後のc-raf mRNAの発現量について検討した。All trans retinoic acid(RA)において最も、次いで血小板由来増殖因子(PDGF)においてc-raf mRNA発現の増加が認められた。IL-3,IL-6,GM-CSF,G-CSF,エリスロポエチン、フォルボールエステル(TPA)、DMSO,γ-インターフェロンにおいては、発現量に変化は認められなかった。 RA処理によるc-raf mRNAの発現は当初は増加するが、長期間培養液中に加え続けると4週目以降では、逆に発現量は投与以前に比べて強度に抑制された。この様なc-raf mRAN発現量の低下した細胞において、6時間無血清状態にて培養後牛胎児血清(FCS)にて刺激したところ、核内癌遺伝子であるfos遺伝子の発現はRA無処理細胞と比較し著しく低下していた。発現量の時間的推移については、共にFCS添加後15-30分をピークとし、以後徐々に減少し両者に差は認められなかった。同様に核内癌遺伝子であるc-mycについて検討したが、両者で発現に全く差が認められなかった。この事よりraf遺伝子はfos遺伝子への伝達系には関与するが、myc遺伝子には関与しない事が示唆された。 CMK細胞をTPAで処理すると低分子量G蛋白質smg p21遺伝子の発現が著しく増加した。そこでc-raf遺伝子の発現とsmg p21遺伝子の発現との相関について現在検討を進めている。またCMK細胞はGM-CSF、IL-3、IL-6、IL-11等に反応し増殖・分化が誘導される。これら因子は直接raf遺伝子の発現に影響を及ぼさなかったが、RA処理によりraf遺伝子発現の低下した細胞における増殖・分化に及ぼす影響について、検討を進めている。
|