研究概要 |
GーCSFは単一の遺伝子からalternative splicingによりa型とb型の2つの分子種が産生される。前者はLeu35の後にアミノ酸が3個付加され、その生物活性は後者の約1/10である。そこで、このアミノ酸挿入部位近傍がGーCSFレセプタ-との結合に重要であると考え、以下の実験を行った。まず、 ^<125>I標識GーCSFbの好中球への結合実験において、非標識のGーCSFa,bならびに各種抗GーCSF抗体による結合阻害反応を調べた。予想通り、GーCSFaのレセプタ-への親和性はGーCSFbの約1/10であった。抗GーCSF抗体についてはさらに、ヒト骨髄細胞を用いた好中球コロニ-形成系およびGーCSF依存性増殖を示すNFS60細胞の液体培養系においてGーCSFに対する中和活性を調べた。また、各抗体のGーCSFへの結合能についてはenzyme immunoassay(EIA)法により検討した。次に、GーCSFbのa.a.^<1-30>,a.a.^<31-60>,a.a.^<61-90>,a.a.^<91-120>およびa.a.^<23-44>に相当する各ペプチドを合成し、各抗GーCSF抗体との反応性をEIA法で調べ、エピト-プ・マッピングを行った。その結果、中和活性とレセプタ-結合阻害活性を有する抗GーCSF抗体(レセプタ-結合ドメイン近傍を認識すると考えられる)がアミノ酸挿入部位近傍のペプチド(a.a.^<23-44>)を認識したことから、このペプチド近傍がGーCSFのレセプタ-結合ドメインであると推定される。したがって、GーCSFaにおける3ケのアミノ酸挿入がそのGーCSFレセプタ-への結合を阻害したものと考えられ、GーCSFaの生物活性の低下が分子構造の上から説明できるものと思われる。尚、GーCSFa mRNAとGーCSFb mRNAを識別することができるRTーPCR/HphI分析法を確立し、ストロ-マ細胞の産生するGーCSF mRNAのタイプを調べたところ、GーCSFb mRNAが主体であることが判明した。
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