サイトカインネットワ-クによる白血病細胞増殖の制御に関する研究

1991 年度 実績報告書

• 研究課題/領域番号: 03671180
• 研究機関: 東京医科歯科大学
• 研究代表者: 奈良 信雄 東京医科歯科大学, 医学部, 助教授 (00142258)
• 研究分担者: 村上 直巳 東京医科歯科大学, 医学部, 助手 (50143582)
• キーワード: 急性白血病 / 白血病性幹細胞 / サイトカイン / 顆粒球コロニ-刺激固子(CSF) / インタ-ロイキン(IL) / Stem cell Factof / Dーfactor / 情報伝達機構

研究概要

急性白血病における白血病細胞の増殖機構を解明し、白血病の治療法の確立に寄与することを目的として研究を行なった。ことに白血病細胞の無制限の増殖を支持する白血病性幹細胞の増殖をめぐるサイトカインネットワ-クを解析することを目的とした。従来までの研究により、白血病性幹細胞の増殖は、種々の顆粒球コロニ-刺激固子(CSγ)及びインタ-ロイキン(IL)の影響を受けることを明らかにした。平成3年度の研究では、下記の点を明らかにした。
第1に、白血病性幹細胞に対するInterleukinー4(ILー4)の作用を研究した。ILー4は、白血病性幹細胞の増殖を刺激する症例もあるが、逆に抑制する症例もあった。ILー4による白血病性幹細胞の増殖抑制機構を検討したとこら、ことに白血病細胞の単球系への分化誘導作用と関連することが明らかにされた。
第2に、stem cell factor(SCF)の白血病性幹細胞に対する作用を研究した。SCFは、大多数の症例で、白血病性幹細胞の増殖を刺激した。しかも興味あることに、未分化な白血病細胞といわれるCD34陽性細胞でSCFの刺激作用が顕着であった。このことは、白血病細胞の起源に応じて、その増殖を制御するサイトカインが異なることを示唆すると考えられる。
第3に、Lerkemis Inhibitory Factor(LIF,Dーfactor)の作用を検討した。LIFは、白血病性幹細胞の自己再生能を抑制して、白血病性幹細胞の増殖を抑制することが明らかにされた。
第4に、白血病細胞の増殖に対するCSFの情報伝達系の解析を行った。protein Kinase A,C,eyrusine KinaseがCSFのsecond messengerである可能性が証明された。個々のCSFとの相互作用については、次年度の研究課題とした。

研究成果

• [文献書誌] Y.Imai,N.Nara,S.Tohda,K.Nagata,T.Suzuki,M.Nagasawa,I.Murohashi,and N.Aoki: "Antiproliferative and Differential Effeces of Recombinant Interleukinー4 on a Granulocyte ColonyーStimulating FactorーDependent Myeloblastic Leukemic Cell Line." Blood. 78. 471-478 (1991)
• [文献書誌] Y.Yamashita,S.Tohda,K.Nagata,T.Suzuki,Y.Imai,and N.Nara: "The in vitro Effects of Vincristine on the Blast Cell Renewal in Acute Myelblastic Leukemia" Japanese Journal of Medicine. 30. 412-419 (1991)
• [文献書誌] S.Tohda,N.Nara,I.Murohashi,and N.Aoki: "Establishment of an Interleukinー3ーDependent Leukemic Cell Line From a Patient with Chronic Lymphoctic Leukemia in The Acute Phase" Blood. 78. 1789-1794 (1991)
• [文献書誌] T.Suzuki,M.Bessho,K.Hirashima,s.Tohda,K.nagata,T.Morio,Y.Imai,and N.Nara: "Enhancement by Transforming Growth Faceorーβ1(TGFーβ1)of the Prolifevation of Leukemic Blast Progenitors Stimulated with ILー3." Journal of Cellular Physiology. 148. 396-403 (1991)
• [文献書誌] Y.Imai,S.Tohda,K.Nagata,T.Suzuki,N.Nara,and N.Aoki: "Effeces of recombinant interleukinー4 on the growth and diffeventiatim of blase progenitors stimulated with GーCSF,GMーCSF and ILー3 from acate myeloblastic leukaemia patients." British Journal of Haematology. 78. 173-179 (1991)
• [文献書誌] S.Tohda,N.Nara,Y.Imai,and N.Aoki: "Effect of Protein kinase Inbibitors on the Proliferation of Leukemic Cells stimulated by Granulocytes ColonyーStimulating Factor,GranulocyteーMacrophage Colonyーstimulating Factor or Interleukinー3." Leukemia. 5. 813-814 (1991)
• [文献書誌] 奈良 信雄: "臨床医学総論" 医歯薬出版(東京), 224 (1991)
• [文献書誌] 奈良 信雄,室橋 郁生,今井 康文,谷川 宗,東田 修二,長田 薫,山下 陽子,丸山 保夫,鈴木 竹哉「白血病細胞増殖とサイトカイン」: "柴田昭.青木延雄編集「血液疾患のバイオテクピ-」" 医歯薬出版(東京), 38-45 (1991)