研究概要 |
ヒト骨髄線維症の発症に骨髄巨核球や白血病細胞由来のPDGF,TGFーβが果たす役割を解析し、次のような結果を得た。 1)ヒト巨核球性白血病細胞株におけるPDGFの遺伝子発現と蛋白生合成分泌過程を明らかにした。すなわち、本細胞株をTPAにて分化誘導することにより、PDGFーA鎖とB鎖のmRNAが発現され、PDGFーA鎖とB鎖からなるヘテロダイマ-が合成、分泌されることを示した。本細胞株においてPDGFが細胞外に分泌されることは、骨髄線維症患者において、骨髄中で腫瘍性巨核球からもPDGFが細胞外に分泌される可能性を示唆しており、骨髄線維症のモデルとなりうると考えられる。 2)ヒト骨髄線維芽細胞の増殖にはオ-トクリン機構も関与していることを示した。すなわち、ヒト骨髄線維芽細胞の培養上清中には、線維芽細胞コロニ-及び継代線維芽細胞の増殖を促進する活性が認められたため、その性状を検討したところ、本増殖に関与する因子は非耐熱性、酸に安定な分子量約100×10^4の蛋白であることが明らかとなった。抗体を使った結果より、本因子は現在知られている線維芽細胞増殖因子及びその結合蛋白との複合体のうちPDGF,ILー1,TNFなどとは異なっていた。分子量から細胞外マトリックスを構成する蛋白あるいはプロテオグリカン等の可能性が考えられる。 3)骨髄線維化の認められる患者の骨髄生検材料より巨核球あるいは白血病細胞上のPDGFとTGFーβ及び骨髄線維芽細胞上のPDGFとTGFーβレセプタ-をそれぞれmRNAレベルと蛋白レベルで検出する条件の検討を行った。
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