研究概要 |
ヒト骨髄線維症の成立には骨髄巨核球や、白血病細胞由来のPDGF,TGF-βが関与する可能性が示唆されているが、本研究はPDGFとTGF-βの本症成立に果たす役割を解析し、広く臓器線維症の発症機構の解明に役立てることを目的とした。まず、慢性骨髄性白血病(CML)の急性転化例にみられる骨髄線維化と白血病細胞中のPDGF発現との関係について検討した。CML急性転化で骨髄線維化にみられた症例より樹立された細胞株をTPA処理することにより、PDGF-A鎖とB鎖及びTGF-β mRNAの発現を認め、PDGF-ABへテロダイマーが分泌されることを明らかにした。さらに、実際の骨髄線維化を伴った骨髄性急性転化の症例ではPDGF-A鎖、B鎖の両者のmRNA発現と培養液中へのPDGF分泌を認め、線維化を伴わなかった症例ではA鎖mRNAのみ認めPDGF分泌は認めなかったことから、白血病細胞におけるPDGF-B鎖の遺伝子発現が骨髄線維化に重要であることを示した。次に、ヒト骨髄線維芽細胞の増殖にはオートクリン機構が関与することを見出し、本増殖に関与する因子は非耐熱性、酸に安定な分子量約100×10^4の蛋白であり、PDGFやIL-1,TNFなどとは異なることを明らかにした。
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