研究概要 |
ATLおよびHTLV-I感染細胞におけるGD2ガングリオシドの特異的発現のメカニズムを明らかにするため、GM_2/GD_2を合成するβ1,4GalNAc転移酵素遺伝子のcDNAを、真核細胞発現クローニング法により単離した。本酵素は533ヶのアミノ酸よりなるII型の膜タンパクで、N末端近傍に存在する膜貫通部位によりGolgi体にアンカーするものと推測された。本遺伝子をプローブにして以下の如き実験結果を得た。 1,ATL又はHTLV-I陽性細胞株で高いβ1.4GalNAc転移酵素遺伝子の発現が見られることを、ノザンブロット及びRT-PCR法にて確認した。 2,患者ATL細胞の未培養状態において、β1.4GalNAc 転移酵素遺伝子mRNAとHTLV-IP40^<tax>のmRNA発現につき、RT-PCRにて比較検討したところ、6例中4例においてpXmRNAの発現が認められ、同じ4例においてβ1,4GalNAc転移酵素mRNAを認めた。その中の特に発現の高い症例では、約50%のGD_2発現を認めた。 3.レトロウィルスベクターによりP40^<tax>を発現させた正常末梢T細胞では明らかなGD_2発現を認めたが、その細胞より抽出したRNAを用いてRT-PCRを行ったところ、コントロール細胞に比し極めて高いβ1,4GalNAc 転移酵素遺伝子の発現を確認した。 これらの結果より、HTLV-I陽性細胞ではP40^<tax>によるトランスアクチベーションの結果、β1,4GalNAc転移酵素遺伝子の活性化が起こり、GD_3からGD_2の合成が進むと推定された。この機構につき分子レベルで解明するために、β1,4GalNAc転移酵素のゲノム遺伝子を単離し、そのexon-intron構造を明らかにすると共に、5'側非翻約領域のプロモーター/エンハンサー活性と特異性につき解析中である。
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