研究概要 |
内科領域での高アンモニア血症は、主に肝不全、稀にはasparaginaseの治療などによって生じることが知られていたが、骨髄腫によって高アンモニア血症をきたすことは、ほとんど報告がなかった。しかし我々は最近、骨髄腫患者で、血中アミノ酸異常と高アンニア血症を示した。2症例を経験し報告した(Acta Haematol.184:130ー134,1900)。この2症例とも高アンモニア血症の原因となる重篤な肝障害はなく、組織学的からもほぼ正常の肝であった。また臨床経過から骨髄腫の治療により高アンモニア血症が改善したことから、骨髄腫細胞の特異なアミノ酸代謝によって高アンモニア血症をきたしていることが示唆された。骨髄腫細胞には株化困難な細胞であるが、骨髄腫細胞のアミノ酸代謝を研究するために、株化を試みたところ、2例のうち1例の株化(KHMー4の樹立)に成功した(Internal Medicine in press)。そこで樹立されたKHMー4細胞株も使って検討した結果、グルタミン、アルギニン存在下でKHMー4細胞が大量のアンモニアを産生することが判明した。グルアミンによるアンモニア産生は他の細胞株でも認められるが、アルギニンによるアンモニア産生は他の細胞株では認められず特異な現象であった。そこで熊本大学実験遺伝病講座の森教授との共同研究で、細胞質内のオルニチンサイクルに関わる各酸素Arginase、Ornithihe transcarbamylase(OTC)やArginine deiminaseなどの酵素活性を測定したところ、KHMー4ではOTC活性が有意に高いことが示された。よってアルギニン存在下でのアンモニア産生はOTC活性のためと考えられたが、細胞株をマイコプラズマ除去剤で処理するとOTC活性が消失することから、OTC活性ではin vivoで認められた高アンモニア血症を説明できないかも知れない。さらなる詳細な検討が必要である。
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