研究概要 |
既に高アンモニア血症、血中アミノ酸異常を示した2症例を報告している(Acta Haematol.84:133-136,1990)。更に内1例より細胞株(KHM-4)の樹立に成功している(Inter.Med.31:339-343,1992)。今回樹立されたKHM-4細胞株を使って検討した結果、Glutamine、Arginine存在下でKHM-4細胞が大量のアンモニアを産生することが判明した。Glutamineによるアンモニア産生は、他の細胞株でも認められるが、Arginineによるアンモニア産生は他の細胞株では認められず特異な現象であった。そこで熊本大学実験遺伝病講座の森教授との協同研究で、細胞質内のオルニチンサイクルにかかわる各酵素Arginase,Ornithine trans-cabamylase(OTC)やArginine deiminaseなどの酵素活性を測定したところ、2つの細胞株でOTC活性が有為に高いことが示された。in vitroで認められたアルギニン存在下でのアンモニア産生はOTC活性のためと考えられたが、細胞株をマイコプラズマ除去剤で処理するとOTC活性が消失することから、OTC活性では患者に認められた高アンモニア血症とアミノ酸代謝異常を説明できないかも知れない。さらなる酵素学的検討が必要である。最近更に高アンモニア、high output cardiac failureを合併した23歳男性のplasma cell leukemia症例を経験した。今まで報告がなかったのは、アンモニアが正常な肝に代償されるためで、注意深く観察すればかなり多い病態であると考えられる。またhigh output cardiac failureの合併は、骨髄腫細胞から血管拡張因子の産生をつよく示唆するため、arginineにnitric oxide synthase(NOS)という酵素がはたらきNOが産生される可能性について検討を進めている。
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