研究概要 |
発作性夜間血色素尿症(PNH)の病態解明が進み,細胞膜表面上のGPI蛋白アンカー部分の生合成の障害が主因であることが明らかにされつつある。GPI蛋白としてはDAFやHRF20などの補体制御因子やLFA-3などの接着因子がPNH血球膜上で欠損している。PNHはクローナル疾患として知られているが,これらのGPI蛋白欠損が幹細胞から成熟血球への分化過程のどの段階で発生してくるのかまだ明らかではない。我々はDAFに対するモノクロナール抗体を用いてPNH幹細胞にはDAFが欠損していることを証明した。一方,Mooreらは幹細胞にはDAFは発現しており,それ以降の分化段階で欠損してくると主張している。今回はHRF20に対するモノクロナール抗体を用いてPNH幹細胞とその分化過程におけるHRF20発現について検討した。まずPNH骨髄細胞を抗体で反応させFACSでHRF20陰性細胞と陽性細胞に分画し,それぞれの分画をメチルセルロース法で培養した。10-14日目に形成された顆粒球系ユロニー及び赤芽球系バーストを吸引採取して集め再びHRF20の抗体で反応させて細胞表面上のHRF20発現を解析した。HRF20陰性前駆細胞から多数のコロニー・バーストが形成され,それらの産生細胞はHRF20を発現していなかった。一方HRF20陽性の前駆細胞からもコロニー・バーストが形成されるが,それらの構成細胞にはHRF20が発現しているものと発現していないものとが混在していた。SCFという造血因子を用いてコロニー・バーストを増大させて個々のコロニーのHRF20発現を検討すると,コロニーは陽性細胞か陰性細胞のどちらかで構成されていた。以上の結果,PNHの幹細胞にはすでにHRF20を欠損しているものと,保有しいるが後の分化段階でHRF20を欠損するものとが存在し,PNHの異常の発現が幹細胞から血球分化過程のいくつかの段階で発生してくることが示唆された。
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