高電力高周波(マイクロ波も含む)用の真空シール窓は、普通高出力真空管の出力窓等に用いられ、大気または超高真空という条件下で安定に働くよう、設計製作技術として確立されている。しかしながらこれらの条件の特徴は、化学的腐蝕が無視できることである。一方反応性プラズマを発生させる装置に高周波窓を用いる場合従来の窓では、プラズマから来る反応性のイオンやラジカルのため、表面の腐蝕が起こり、(1)装置の寿命が短く、(2)プラズマへの不純物の混入が著しい。 耐蝕性物質で表面を覆うことによってこの困難を克服しようとするのが本研究の発想である。耐蝕性物質の候補としてCr_2O_3とTiNを取り上げ、Cr_2O_3はAr-O_2混合プラズマの存在下でCrをマグネトロン・スッパターさせることによって、またTiNは窒素の高周波プラズマの存在下でTiを蒸発させて、窓表面(無酸素銅およびアルミナ)に堆積させた。厚みは3000Å程度であった。両者の化学的組成はXPS観察で確かめてある。 ECR酸素プラズマ発生装置のマイクロ波導入窓として2.45GHzのマイクロ波を500W投入して100時間実施した。その性能の変化は、プラズマ照射の前と後で、同軸線路としての特性を測定して調べた。因みに本研究で試験した窓は、NTT規格39D(外導体の内径φ39、内導体の外径φ16、特性インピーダンス50Ω)を基本にして、真空シールと高周波伝搬にアルミナ板を使用し、アルミナの内外導体との接触面をメタライズして銀鑞付けしたものである。 定在波比および挿入損失の測定より、照射前後での特性変化は認められず、また視察によっても損傷は見当たらなかった。従って、当初の着想は正しく、反応性プラズマに対して安定な窓を開発するのに成功したと言える。
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