研究概要 |
前年度においては,自発的内部ゆらぎを用いて環境の変化に適応した行動をとることができる“人工生物粒子"のモデルを理論とコンピュータシミュレーションの両面から検討するとともに,新しい数理モデルの着想を得,ある単純な場合についてのコンピュータシミュレーションでは良好な結果を得た.本年度は,この新しいモデルに関して,さらに検討を進めた.まず,人工生物粒子が環境に適応する原理をつぎのように整理することができる.すなわち粒子の運動は,内蔵された確率的ニューラルネットワークの出力部の興奮パターンにより制御され,ネットワークの入力部にはセンサーから得られる外部環境に関するデータが与えられる.運動の過程で,環境に対する適応度の高い入出力関係がニューラルネットの自己組織化機能により学習され,適応度の低い入出力関係は忘れ去られる.適応が完了したのち環境が急変しても,ニューラルネットの入出力関係に存在するゆらぎのなかから新しい環境に適合するものが選択され,再適応が行われる.いくつか異なった条件のもとでコンピュータシミュレーションを行った結果,上記の原理に対する裏付けとなり得る結果が得られた.このようにして,自発的内部ゆらぎを利用して環境に適した行動様式を自ら創出できる,“開いた自律制御システム"に対する新しいモデルが構築された.
|