この研究の目的は、離散的問題を連続・非線形な世界に変換して考え、その連続体上での種々の構造を用いて、元の離散構造を効率良く解くアルゴリズムを開発することである。これは、計算機は年々速くなっても、離散的問題の中には、既存の離散的アプローチだけでは到底現実的時間内では解けなさそうであるものが多く、そのような離散的問題をなんとか解くためには、問題を解く方式そのもの、すなわちアルゴリズムの土台を考え直す必要があるからである。 本研究では、特に線形計画問題とその特殊な場合であるネットワーク計画問題、またより難しい整数計画問題を対象の問題とし、それに対する連続体モデル上でのアルゴリズムについて研究した。線形計画法については、線形計画問題の最適解の中に端点となるものがあることを利用した単体法が従来の主要な方法であり、離散的解法であったが、1980年代後半より注目された内点法は、まさしくその離散的な解釈を連続の世界に変え、その上でアルゴリズムを考案したものと言える。本研究では、線形計画問題に対する内点法に関する研究を行ない、連続的な世界での計算量解析などの成果を上げた、特に、従来未解決であった研究グループの提案したアルゴリズムの多項式時間性に関するよい結果を得た。また、線形計画問題を、離散的側面のみでなくその幾何的側面に着目して、計算幾何学の手法を用いて解法が構成できることについて研究した。特に、その中で確率を用いた手法に着目し、アルゴリズムの中で自らランダムな振舞いを導入するランダム化手法について、詳細な検討を加えた。これと関連して、整数計画問題を緩和法により線形計画問題を通して解く手法についても、ランダム化手法などとの関連を調べ、同時にその並列処理可能性について解析を行なった。また、より計算幾何的成果として、線形計画問題の特殊な場合である1次元点集合のマッチング問題に対する効率的解法も与えた。
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