研究概要 |
上記の研究課題に関して得られた知見を以下に述べる。 (1)企業会計の公理論的階層構造に着目し、とりわけ会計公準より演繹的に導出され、会計行為に対する一般的な指針を示すものとされている企業会計原則(損益計算書原則、貸借対照表原則)を対象とし、それらの代数的な記述を行うとともに、その記述のもつ性質について述べた。まず、企業会計原則の条文を分析し、その基本的な概念を抽出し、それらに対応するデ-タタイプ(ソ-ト)や関数を導入した。そして、条文の記述からごく自然に関数間の関係を簡潔に公理として書き下することができ、企業会計原則の代数的記述を導いている。得られた記述に関しては、その記述の特徴より公理系として“矛盾がなく"かつ“不足なく"書かれていること、な どの諸性質が満たされていることを示すことができた。 (2)一方,無矛盾性や準完全性が保証された公理系としての会計モデルを,会計専門家システム(構築済の与信評価エキスパ-トシステム,等)へ組み込むことに関しては、企業会計原則がその拠って立つ基盤である会計公準から演繹的に導出されうることを示した上で,議論する必要があることがわかった。しかるに、会計公準から企業会計原則までを項書き換え系として系統的に記述するには、会計公準の内に有はる多くの会計概念をどのように切り出し矛盾なく記述するかが問題となる。これは会計公準に関する会計学上の本質的な解釈の問題にも依存しているので,会計学的に綿密な検討を加えた後で議論する必要があり,今後に残された研究課題である。 上記の知見を通じて,会計分野の専門家システム構築のツ-ルとして代数的手法が有望であるとの確信を得た。
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