研究概要 |
(1)前年度に開発したMandala方式の相互結合網によるプロセッサ間通信方式についての研究し,デッドロック回避,マルチキャスト通信,適応中継などの方法を確立した.また中継ノードであるルータの実現方式について研究し,接続ポート数4のルータを1チップ上に実現するためのゲートアレイの設計を行い,シミュレーションによって性能評価を行った結果,40MB/秒以上の転送速度がえられることを確かめた.所要ゲート数は12,000であった.またVR3000マイクロプロセッサを使用した高性能プロセッサ要素のプロトタイプの試作を完了し,必要な基本ソフトウェアの開発に着手した. (2)競合プロセッサ方式による並列配線処理のアルゴリズムによる高速処理の特長を損なわずに,高度の配線率を達成するために考案したランダムリップアップ方式による並列配線プログラムを開発し,並列計算機Coral68Kによって処理実験を行った.その結果,リップアップにより配線率の改善は効果的であったが,プロセッサ間の競合が急増し,処理時間が著しく増えることが分かった.今後はリップアップするネットの選択法の研究を進める必要があることが明らかになった. (3)個別の漢字の構造に関する知識ベースをそれぞれのプロセッサにもたせ,ある文字のパターンが与えられると各プロセッサがそのパターンに含まれるストロークの種類と,それらの間の位置関係を各自の知識ベースと照合して,対応する文字かどうかを認識する競合認識方式について基礎的な実験を行った.すなわち比較的画数の少ない数種の漢字について知識ベースを作成し,予めストロークに分離した文字パターンを与えて並列に推論させた.その結果,一つのパターンが複数の文字と認識される場合に,推論の確度だけでは正しい認識が得られない場合のあることが確かめられた.このことから,推論結果が競合した場合の競合解消法には競合するプロセッサの知識ベースの非共通部分について更に推論を行うなどの方法を検討する必要のあることが明らかになった。
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