研究概要 |
本研究の最終年度である平成5年度はこれまでの2年間の研究結果をふまえ,得られた成果を広く公表するとともに,シストリック・アレイの実用化に向けての研究を終了した。今年度は次の結果を得た。 (1)複数個の故障プロセッサを含む1次元アレイ上での効率の良い同期化アリゴリズムが得られているが,本年度はこれを2次元アレイ上に拡張し,メッシュアーキテクチャへの対応も可能にした。しかしながら得られたアルゴリズムは最適時間のものでないため,改良の必要性がである。耐故障性を備えた同期化アルゴリズムに関しては、1993年9月フランス国で開催されたInternational Conference on Parallel Computing'93にて研究発表を行った。 (2)ウエハー上での占有面積を最小にする2次元グローバル・バスの埋め込み法についても考察し、時間遅れが比較的少ない埋め込み法を考案した。これに関しては現在必要面積並びに通信時間など各種のパラメータを評価している段階である。 (3)現有設備である256個のトランスピュータから構成される並列計算機上に,プロセッサ間通信並びに処理に要する時間をモニタするシステムを構築中であったが、本年度はこれが完成し並列計算機アーキテクチャの各種パラメータを評価できるようになった。モニタリング結果はグラフィックディスプレイ上にダイナミックに表示され、良好なパラレルプログラミング環境を提供するとともに,ユーザにどのような並列プログラムを書けば性能が上昇するかなどと行った情報を提供することが可能である。当システムを利用して,細粒度並列アリゴリズム設計におけるグローバルデータ転送と局所計算における両者のバランスの検討が容易になり,今後シストリック・アーキテクチャの効率評価が進むものと期待される。これらの研究成果については現在論文としてまとめている段階である。研究テーマとは直接関係ないが,本システムを構築していく上で,「OccamTransputer/Occamによる並列プログラミング入門」を翻訳できたことは,今後パラレルプログラミングの必要性が増大して行くことを考えると意義深いものと思われる。
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