研究概要 |
(1)小腸刷子縁膜二糖類水解酵素の遺伝的異常または糖に対する遺伝的不耐性症は,ヒトではかなりの症例報告がある.しかしながら,これらの異常を研究する実験動物はいままで育成されておらず,詳細な遺伝学的,分子生物学的研究に不都合を生じていた.そこでモデル動物を育成する目的で,日本産食虫類の中で野生スンクス集団およびそれ以外のトガリネズミ亜科6種,ジネズミ亜科1種,モグラ科3種についても小腸刷子縁膜二糖類水解酵素の活性を測定測定した. (2)その結果,スンクスでは多良間島産野生個体すべてがスクラ-ゼ活性を欠損していた.スリランカ産バングラデシュ産,沖縄本島産,徳之島産には欠損型はみいだせなかった.スンクスのNem:NGAラインの中で家系図を作製したところ,スクラ-ゼ活性の欠損型は常染色体単ー遺伝子によって支配されていることが判明した. (3)本州に生息するトガリネズミ科ジネズミ亜科のニホンジネズミ(2地域4匹)およびモグラ科のヒミズ(6地域12匹),ヒメヒミズ(2地域12匹),アズマモグラ(1地区1匹)では測定したすべての個体でスクラ-ゼの活性が認められた. (4)日本産野生食虫類のうち北海道東部で採集したトガリネズミ科トガリネズミ亜科のオオアシトガリネズミ(1地域7匹),バイカルトガリネズミ(1地域1匹),ヒメトガリネズミ(1地域8匹)および本州産のアズミトガリネズミ(1地域2匹),シントウトガリネズミ(2地域5匹),サドトガリネズミ(1地区4匹)では測定した全ての個体でスクラ-ゼの活性が欠損していた. (5)スンクスはスクラ-ゼ活性欠損という二糖類水解酵素の遺伝的異常をもった最初のモデル動物でありさらに新たなモデル動物の育成の可能性が予測できた.
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