実験動物、特にラットにおける腎症候性出血熱(HFRS)の原因 Virusの伝播様式を解明する目的で実験を行った。 1、5〜6週齢雌ラットにHantavirus B-1株を接種し高抗体価を保有していることを確認後交配、その新生仔と非免疫雌の新生仔を産仔交換し胎内における移行抗体及び経乳汁移行抗体のVirus感染防御能に与える影響について調べた。胎内で受け取った移行抗体は生後逐次低下し約60日で陰性となる。一方乳汁移行抗体は約120日で陰性となるが、両移行抗体とも新生仔におけるVirus感染による死亡を防御することが明らかとなった。しかし、新生仔へのVirus感染は接種Virus量の増大や哺乳による抗体移行が遅れた場合には成立し得る事が明らかとなった。 2、免疫不全ラットにおける高頻度実験室内感染系の確立。 Rowett系Nude ratはヘテロ個体では健常ラットと変わり無いがホモ個体では免疫機能不全症となる。Virus接種したホモ個体と同一ケージ内飼育をしたラットは全て4週目より抗体価の上昇がみられケージ内感染が成立した。一方Virus接種したヘテロ個体と同一ケージ内飼育したヘテロは抗体価の上昇はみられず感染は成立しなかったが、ホモ個体では飼育10週後に抗体価が上昇し感染が成立した。 Rowett系Nude ratホモ個体は、virus接種により、同一ケージ内飼育による感染源となり得る。一方、virus接種ヘテロ個体は健常個体には感染源となり得ないが長期に渡りVirusを排出しておりホモ個体に対しては感染源となり得る。この様にホモ個体はHFRS virusに対し高い感受性を示し且つ強い感染源となり得る。これらの実験動物はHFRS Virusの伝播様式解明のモデル動物として有用である。
|