研究概要 |
動物実験施設を中心として、そこにかかわるヒト、動物および環境を対象として緑膿菌の疫学調査を実施した。具体的な検索箇所としては,(1)ヒト:研究者および動物飼育者の動物飼育室入室前後の手指および口腔,(2)実験動物:マウス,ラットの新鮮糞便および飲水,(3)動物実験施設内の環境:飼育室内の流し台など8ケ所,あるいは飼育室周辺の廊下床面など7ヶ所を対象とした。検査方法は,NAC培地にて緑膿菌を分離したのち,パイルチュ-ブNo.2で同定,さらに緑膿菌用免疫血清にて血清型別をおこなった。その結果,現在までに達成された研究成果としては,(1)ヒトからの緑膿菌の分離:研究者の口腔からは,飼育室への入室直前、入室中および退室直後に約8%から分離され,また手指からは入室直前と退室直後に少数例から分離された。これに対して,動物飼育者の口腔からはいずれの時点からも分離されなかったが,手指からは作業終了後にのみ約5%のヒトから分離された。(2)動物からの緑膿菌の分離:一部の動物飼育室のマウスの糞便および飲水からそれぞれ高率に分離されたが,他の飼育室で飼育されたいる動物からほとんど分離されなかった。(3)環境からの緑膿菌の分離:一部の飼育室内の流し台と飼育棚さらに周辺環境の廊下床面から少数例分離された。(4)分離された緑膿菌の血清型別:研究者の口腔からは種々の型の緑膿菌が分離されているが,研究者と動物飼育者の退室直後の手指,動物の糞便と飲水水あるいは流し台,飼育棚および床面などから分離された緑膿菌は,ほとんどがG型に限られている。 以上の成績からすると,現在までのところ,実験動物にかかわるヒトは緑膿菌感染の被害者あるいは媒体者としての役割を果たしていると考えられる。
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