研究概要 |
1)下垂体ホルモンの状況に関して,従来、免疫組織学的検討がなされていたが,これらについてRIAで測定した。その結果,rdwラットは正常ラットに比べて,血中及び下垂体還度ともに,GHのみでなく,プロラクチン,TSHの三種の下垂体ホルモンの産生不全であることが明らかになった。 2)ノ-ザンハイブリダイゼ-ションの実験でも,rdwラット下垂体においては,GHならびにPRL mRNAの発現量が正常ラットに比べて1/30〜1/100と極めて低下している反面,プレオピオメラノコルチン(POMC),CH,FSH,TSHに共通なα鎖,LHβ鎖,FSHβ鎖のmRNAの発現量には,極端な差異がみられなかった。これらの成績は,侏儒症の原因解明の実験によく用いられている遺伝性侏儒症マウスであるSnellやAmesと類似していた。 3)最近,Snellマウスにおける侏儒の原因遺伝子は下垂体特異的な転写因子であるPitー1をコ-ドする遺伝子であることが判明した。そこで,これらのマウスの侏儒症の原因と考えられているPitー1の下垂体におけるmRNAについて調べたところ,rdwラットではこれらのマウスとは異なり,Pitー1のmRNA発現量は正常ラットとほぼ同じであった。従って,rdwラットの原因遺伝子の産物は,somafotrophs,lacfotrophs,thyrotrophsのproliferationやdifferentiationに重要な役割を果たす蛋白ではあるが,Pitー1蛋白そのものではないと思われる。 4)以上の事から,rdwラットはヒトの下垂体性侏儒症や下垂体機能低下症,特に,Familial panhypopituitary dwarfismの重要な疾患モデル動物になると考えられる。
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