研究概要 |
rdwラットの病因メカニズムを分子レベルで明らかにする第一歩として下垂体における下垂体ホルモンmRNA並びに下垂体特異的転写因子Pit-1遺伝子の発現を検討した。その結果、rdwラット下垂体のGH及びPRLのmRNAの発現量は正常ラットに比較して極めて低下していた。反面、POMC、α-subunit、LH β-subunit等のmRNA量にはrdwと正常ラットとの間で有意差がみられなかった。Snell,Ames,Jacksonマウスの侏儒の原因遺伝子と考えられているPit-1mRNAに関しては、rdwにおいて、その大きさ並びに発現量は正常ラットとほぼ同じであった。また、タンパク質レベルでも差がみられなかった。従って、rdwは上記マウスと下垂体ホルモンに関して類似の状態を示すが、Pit-1mRNAの発現並びにその産物に関して、上記マウスと異なると結論された。 そこで、今までの成績から甲状腺機能低下が考えられていたので、rdwの侏儒の原因究明のために下垂体-甲状腺系機能を調べた。即ち、甲状腺ホルモン(トリヨードチロニン;T3,チロキシン;T4)並びに甲状腺刺激ホルモン(TSH)について検討した。T3、T4ともにrdwが正常ラットに比べて有意に低値を示した。特に、T4はrdwが正常ラットの23%にすぎなかった。この成績はrdwが甲状腺機能低下症であることを示唆する。このことは甲状腺の組織学的検索によっても証明された。一方、TSHの下垂体含量はrdwと正常ラット間で顕著な差がなかったが、血漿TSHレベルはrdwが正常ラットに比べて有意の高値(9.4倍)に示した。以上から、rdwは甲状腺機能低下症であることが示唆されるが、それが侏儒の第一義的原因であるかどうかについては、現在、血中TSHの生物学的活性、甲状腺のレセプターの分子レベルでの解析を進めている。
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