ハト卵白から精製したカルシウム結合性リゾチ-ムをハンギングドロップ蒸気拡散法により結晶化した。結晶化剤として硫酸アンモニウムを使用した。同結晶をX線同折計で調べたところ斜方晶系に属し、空間群はP2_12_12_1であることが判明した。非対称単位中には1分子が存在している。この結晶からの回折デ-タをフジイメ-ジングプレ-トを使った回折計DIP100により収集し、分子置換法により構造を解明した。3A分解能のデ-タを使い、分子動力学的方法により構造を精密化したところ最終のR値は0.21となった。 ニワトリ卵白リゾチ-ムとαーラクトアルブミンの主鎖とハト卵白リゾチ-ムの主鎖との間で最小2乗法による重ね合わせを行うことにより、ハトリゾチ-ムは、同じカルシウム結合性リゾチ-ムであるαーラクトアルブミンよりもニワトリリゾチ-ムの構造の方により近いことがわかった。一方でハトリゾチ-ムとαーラクトアルブミンの立体構造の差は、ニワトリあるいはヒトリゾチ-ムとαーラクトアルブミンの差より小さい。つまり、進化上、ハトリゾチ-ムはカルシウム非結合性リゾチ-ムとαーラクトアルブミンの中間に位置することが、立体構造の面から確認された。ハトとニワトリリゾチ-ムの主鎖コンフォメ-ションの最も大きな違いは分子表面の-プ部分にあることも判明した(平成3年度日本生物物理学会、日本結晶学会にて発表、J.Biochemistryに投稿)。カルシウム結合部位の構造の詳細に関する議論は、3Aの分解能では不十分であるので、シンクロトロン放射光を使って2Aまでのデ-タを次に収集した。このデ-タを使った構造の精密化を行い現在までにほぼ終了したいる。
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