前年度迄に得られた知見を基に、対象とする天然色素の種類を古来の蘇枋や葛の他、新しい天然染料としての各種の茶葉などに拡大すると共に、従来の天然染料についても染色の方法を改善することによって、それらの効果の検討を行なった.また。天然紫外線吸収剤として、クエン酸の他にアスコルビン酸を使用し、金属塩処理とも併用することによる効果の比較検討を行なった。また、同時に天然色素の日光堅ろう度をより実用に即して評価する為に、前年度設置した促進耐候性試験機(キセノンランプ)XF-180型による測定結果と、従来の合成染料用のフェードメーター(カーボン・アーク法、JIS規格)並びに光化学反応用紫外線照射ランプによる測定結果との比較検討も行なった。 すなわち、まず従来の天然染料による染色の方法が極めて複雑であって、実用濃度の染着量を得る為には何度もの染め重ねが必要であったことが、大きな問題点であったことから、先に別途開発した天然染料の分散染色法の適用を試み、染着量と堅ろう度の比較検討を行なった。それらの結果、例えば、紫根に対しては、分散染色法による1回の染色で、従来の方法による5回の染め重ねの場合とほぼ同等の染着量を得ることが出来、堅ろう度もほぼ同等であった。 また、アスコルビン酸による後処理はクエン酸による処理の場合や合成紫外線吸収剤による処理の場合とほぼ同等の日光堅ろう度改善効果を示したが、それらの中で銅媒染を併用した場合に効果が大きく、さらに鉄媒染の併用がより効果的であることなどの知見を得た。なお、日光堅ろう度の評価において、従来のフェードメーターによる測定法では、特定波長の強い紫外線の照射とかなりの高熱を伴う為、必ずしも天然色素による染色物の場合の実用条件に即しているとは云い難く、促進耐候性試験機による方が適しているようであった。
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