研究概要 |
界面活性剤の浸透・湿潤性の良否は、洗浄、布の染色・加工、高速印刷その他広く界面活性剤を加えた溶液処理過程をともなう分野では基本的に重要な問題である。界面活性剤の浸透性の評価法は大変遅れており、定常状態や平衡における"分"あるいは"時間"のオーダーでの評価である。特に高速処理技術の進んだ今日、溶液の初期浸透速度は非常に重要な問題なのに、1秒以下の過渡状態に於ける浸透性に関する情報は皆無に等しい。 われわれが、新しく開発した電子回路技術を駆使したぬれの過渡現象測定装置を用いれば、これまで動力学的測定の困難であった界面活性剤水溶液の1秒以下の過渡的浸透ぬれ特性の研究が可能となる。そこでこの装置を用いて、各種界面活性剤溶液の布、紙などへの浸透の過渡現象を測定し、Levine et al、Szekely et al,その他の理論式の実験的検証を行い、われわれの測定データから得られた新しい物理的条件を加味した運動方程式を確立し、界面活性剤の構造と浸透性の制御と評価法を確立した。 ポリエステル布への浸透速度に及ぼす界面活性剤の親水基の効果を明らかにするため、疎水基の炭素数が12のものについて調べたところ、ポリオキシエチレンラウリルエーテル(n=18-10)が低濃度で最も良好な浸透性を示し、ついでSDS,ラウリルトリメチルアンモニウムブロミドが最も浸透開始濃度が高いことがわかった。親水基が同じとき、疎水基の炭素数が長い(10-16)ほど浸透速度が大きいことが明らかになった。
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