研究概要 |
目的:幼児の思いやりの精神構造とその発達過程を明らかにするために、3名の幼児をそれぞれ3年間計9年間,自然観察法に基づき追跡的に観察し,その行動事例から大項目10と小項目50の行動項目を設定してきた。さらにこの行動項目の妥当性を計るために,5歳児63名に対して,50項目からなるインベントリ-により調査を実施した。その結果については,第43回家政学会において発表した。今回の研究の目的は,発達過程を明らかにし,行動項目の精選をするために4歳児420名に対し,同じ50項目からなるインベントリ-により調査を実施した。 方法:思いやり行動観察協力園11園の年中児(4歳ー5歳)420名を対象に各々の園の担任保育者が観察者となり,思いやり行動項目50からなるインベントリ-により,思いやり行動を評定した。その結果から,年中児(4歳〜5歳)の思いやりの構造を明らかにするために因子分析を行った。また行動項目を精選するために,共通性の推定結果を得るために行動項目の検討を行った。 結果:因子分析の結果,以下のように6個の因子を抽出することができた。(1)援助行動,(2)自己主張,(3)物や状況に対する共感,(4)相手の気持ちを受け入れ共有する行動,(5)協力行動,(6)創造・充実などの自己活動。この因子分析の結果は,昨年度実施した年長児(5歳〜6歳)の構造と比較して,4個の因子の減少であった。年齢が高くなるほど思いやりの構造は複雑になると考えられる。また精選の過程で3つの項目について問題が発見できた。前年度の結果と合わせて検討している。
|